「AI活用パターン」で考えるDX成功のポイント
- AI・データ活用
- DX推進
- DXリーダー育成
はじめに
DX・AI活用の成功事例がほぼ毎日発表される昨今、
「自社でも取り入れたい」と感じる機会が増えてきたのではないでしょうか?
しかし2つの理由から、他社事例を取り入れるには難しさを伴います。
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■理由1:事例を単純に真似しても自社ビジネスにフィットしない
成功パターンの背景には数ヶ月〜数年の試行錯誤が隠れており、
他社事例を自社ビジネスにフィットさせる工夫が必要です。
■理由2:事例を読み解くための前提知識が不足している
単純にAI・データ活用と言っても様々なテクノロジーが存在しており、
事例から「どうやって導入したのか?」まで理解するのは知識量が必要です。
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そこで本記事では、DXコンサルタントの着眼点を「3つの軸」に分解して
AI成功事例の分析ノウハウを解説しようと思います。
AIの成功事例は「3つの軸」で見る
まず結論からお伝えすると、
AI活用は「3つの軸」で分解すると良いです。
- AIに学習させるデータの種類(CSVデータ、画像データ など)
- AIに任せるタスク(数値予測、画像の識別 など)
- AIシステムの運用フロー(人とAIの役割分担)
ポイント1:データの種類
よく使うデータは「CSV, 画像, 自然言語」の3つ
まず1つ目の着眼点は「データの種類」です。
データの種類で開発できるAIが変わるので最重要な基礎です。
大きくは構造化データ・非構造化データに分ける事ができ、
その中でも頻繁に活用されるのが「CSV、画像、自然言語」です。
- 構造化データ:エクセルのように縦横の表形式で整ったデータ
⇒ CSVデータ、データベース内のデータ - 非構造化データ:規則性がないデータ(=縦横の表形式ではない)
⇒ 画像データ、自然言語データ
構造化データの特徴(CSVなど)
CSVデータに代表される構造化データについては、
さらに細分化して「時系列データ・非時系列データ」に分ける事ができます。
- 時系列データ:1秒毎/1時間毎など、連続して計測したデータ(センサー、売上など)
- 非時系列データ:ある時点の情報を切り取ったデータ(顧客データなど)
それぞれAI活用する目的が異なります。
例えば時系列データは、センサーデータから機械の故障時期を予測したり、
数日後の売上金額を予測するなど、「将来を予測する」ために活用するケースが多いです。
また、非時系列データは「顧客はこの商品を欲しがっているか?」など、
「今時点の状態を予測する」ために活用するケースが多いです。
非構造化データの特長(画像、自然言語など)
続いて非構造化データについても扱っていきます。
まずは「構造化データ以外」のデータと覚えると良いです。
現在、AI活用されているデータの種類としては
大きく2種類(細かくは4種類)あります。
■画像データ:「人の目」を代替するAI活用
- 静止画
- 動画(動画は画像データの集まり)
■自然言語データ:「人の耳・口」を代替するAI活用
- テキスト(文章)
- 音声(人の声)
ポイント2:AIに任せるタスクの種類
タスクは「予測、認識/識別、判断/生成」で切り分ける
続いて「AIに任せるタスク」を扱っていきます。
大きくは3つに分ける事ができます。
■予測:
- 機械が壊れるタイミングは?
- 数日後の売上は?
■認識/識別:
- マスクの着用/身着用
- 写真に映った人物は誰か?
■判断/生成:
- 自動翻訳(英語 ⇄ 日本語 など)
- 人と人の相性(マッチングアプリ)
他にも頻繁に目にする事例として、
「AIが芸術作品を作った」「AIが自動運転をアシスト」など報道されますが、
あくまで数年後の実用化を目指すテーマなのでビジネス活用には向きません。
「AI活用パターン = データ × タスク」で読み解く
ここまでの内容を総括すると、
AI成功事例からたった2つの情報を読み解くだけで全容が理解できます。
1)AIに学習させるデータの種類
2)AIに任せるタスク
予測AIによくある開発テーマ
予測AIに多いパターンとしては、
構造化データ(時系列データ、非時系列データ)を活用するケースが多いです。
背景として、予測AIは「人の行動(商品の購入, 退職の兆候 など)」を扱うので、
規則性が少ない非構造化データでは情報を分析し切れない事情です。
認識/識別AIによくある開発テーマ
認識/識別AIに関しては圧倒的に画像データの活用が多く、
特に医療・製造業など「人の目視が多い仕事」を効率化するケースが多いです。
判断/生成AIによくある開発テーマ
判断/生成AIに関しては自然言語に関するテーマが発展しており、
特に「テキスト情報(文章)」を扱ったAI活用が伸びています。
- 自動翻訳
- 書類チェック(契約書, 請求書)
- 文章の要約
- チャットボット など
ここまでの内容で、
「AI活用パターン = データの種類 × 任せるタスク」が理解できると
成功事例に使われているテクノロジーの詳細を把握できます。
ポイント3:人とAIの分業パターン
最後のポイント3では、AIをどうやって自社導入するのか?
ここを考えるために「人とAIの分業パターン(運用フロー)」について解説します。
分業パターンによって「運用フロー」が決まる
AIを活用した運用フローの構築には大きく3種類あり、
選択するパターンによって導入プロセスが異なります。
- AIが人をサポート:契約書レビューなど、人の仕事をAIで効率化する
- AIが人の能力を拡張:人では不可能な作業(膨大なデータ収集など)を任せる
- 人がAIをサポート:基本はAIに任せて、AIに自信がない部分を人にパスする
なお、現時点では「完全に自律したAI」は存在しないので、
AI活用の成功事例は上記3パターンですべて説明が可能です。
では、それぞれ事例を参照しながら
どういった運用フローが構築できるのか見ていきましょう。
分業パターン1:AIが人をサポート
まず「AIが人をサポート」するパターンのポイントは以下です。
人だけでも成立している業務のうち、
非効率かつ、時間のかかっているボトルネック作業をAIに任せる。
つまり、「単純でルールの決まった作業」を自動化する事になります。
- 大量の入力作業がなくなる
- 大量のデータに埋もれた異常パターンを発見 など
分業パターン2:AIが人の能力を拡張
続いて「AIが人の能力を拡張」するパターンのポイントは以下です。
そもそも「人では不可能だった作業」をAIに任せて、
新しい業務領域を拡張できる
代表例として2つのパターンがあります。
- 膨大なデータの収集:駅などの通行量、来店者の行動データ
- 物理的に難しい作業:危険な場所, 狭い場所, 遠い場所での作業
分業パターン3:人がAIをサポート
最後、「人がAIをサポート」するパターンのポイントは以下です。
基本はAIに任せて自動化して、
AIが判断に迷うイレギュラーな部分を人にパスする
これは「大部分が同じパターンだけど一部の例外が難しい仕事」で有効です。
- 製品の不良判定:全て同じ形状をしており、キズに一定の法則がある
- AIチャットボット:大部分の質問は「よくある質問」として事前に用意できる
つまり、大量の作業を「まずAIが一次対応」して、
パターンに当てはまらない「判断に迷うイレギュラー」を人にパスする運用フローです。
まとめ
AI活用には多くの前提知識が必要となりますが、
ご紹介した3つの軸「データの種類、任せるタスク、分業パターン」で見ていくと
とても効率的にデジタル戦略を考える事が可能になってきます。
- AIに学習させるデータの種類(CSVデータ、画像データ など)
- AIに任せるタスク(数値予測、画像の識別 など)
- AIシステムの運用フロー(人とAIの役割分担)
最後になりますが、DX推進では今までシステム開発に関わってこなかった
ビジネス現場のリーダなどが企画を担当するケースが多いです。
そのため「勘と経験」が不足して進め方がわからないのは仕方ない事だと思います。
この記事が、そういった方々のお役に立つことを願っています。
以上、最後までお読みいただき誠にありがとうございました。